医療経営戦略研究所
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特集 全腎協「透析患者の行動選択に関する実態調査結果」報告
施設の改善・改革・成長と
医療の質向上に大きな手掛かり

2.導入期(外来透析導入1年以内)

1年以内の治療法変更は4.9%、「変えたいと思った」は10.9%

透析開始から5年以上の人が全体の85%を占めるなかで、透析導入1年以内の「治療法変更の有無」の質問については「記憶の発掘」という困難な作業を伴うにもかかわらず、ほぼ全員が回答。4.9%(24入)が変更していたことがわかった。内訳はCAPDからHDへの変更が半数近く(47.9%)で、ほとんどは腹膜炎等によるものだった。逆に、HDからCAPDへ変更した人が21.7%、併用療法への変更が4.3%いた(図11、図12)。

「治療法を変えた理由」では、回答者が23人と少ないが、「医師の勧め」「仕事ができない(仕事と治療の両立)」「体力的に通院が困難」の順だった。記述欄に「自由度が高いから(高くするため)」とあるなど、治療法に積極的に参加しようとしている患者の姿も浮かんでくる。また、医師サイドにも患者のQOL(出産希望なども)について考慮している様子がうかがえる。この変更した人と年齢との関係では、35~39歳と45~49歳の若い層に集中していた。

一方、実際に治療法変更はしなかったが、「変えたいと思った」人は変更した人(4.9%)の2倍以上の10.9%(47人)いた。理由(複数回答)は「通院回数が多い」が一番多く44.7%。若年層にこの傾向が強かった。仕事との両立が困難だからという人も36.2%おり、実際に「仕事との両立のため治療法を変えた患者」と同様、仕事と治療をめぐる困難な選択に直面している状況の一端がうかがえる(図13、図14)。

導入1年以内で施設を移ろうと思った理由
  • 大学病院の外来透析を受けていたが、3ヵ月くらいで医師が転院・異動してしまい、ここは治療の場というより医師の「勉強の場」のように思えた。
  • 医師に体調について相談しても治らないの一点張りで、理解しようともしなかった。今の施設に移り、安定している。
  • 医師が移植嫌いで固定観念が強く、患者 のほうを向いているとは思えなかった。

透析の治療法について、「患者自身が選択できることMANAGEMENT sTRATEGY 06を知っているか」の質問には62.9%の人が「知っている」と答えている。しかし治療上の制限があるとはいえ、実際に治療法を変更した人は4.9%にとどまっているわけだが、これは仕事の有無との関係は見られなかった。

また、「透析を始めて1年以内に他施設に移ろうと思った人」が19.2%(92人)いたが、その理由(複数回答)として医師、看護師を含めた「人の問題」が原因になっていることがわかった(図15、図16)。「その他」の記述欄には「穿刺が下手」「医師が横暴」「医師が専任ではない」「スタッフが不足」「看護師がえこひいきする」などがあった。

「通院時間がかかる」の記述も多く(12名)、「近くに透析施設ができたから移りたいと思った」としている。年齢別では、35~44歳代に最も多く、理由は「医師や看護師に不満がある」が多かった。それよりも上の年齢層になると、これに加え「臨床工学技士や事務職員に不満がある」も増えている。つまり、全年齢層で医師・スタッフなど「人」に対する不満が一番多く、また、有職者が「時間や曜日を変更できない」ことを不満に思っていることもわかった。